膝蓋骨脱臼整復 その他の各種症例の紹介 ■ 各種症例の紹介 トップへ戻る ■ 骨折 ■ 椎間板ヘルニア ■ 膝蓋骨脱臼 ■ 腫瘍切除 ■ 避妊手術 ■ 子宮蓄膿症 ■ 去勢手術 ■ 環軸椎不安定症(環軸椎亜脱臼) ■ その他の外科手術 膝蓋骨脱臼 膝蓋骨とは、膝にある皿状の骨のことで、この膝蓋骨が正しい位置からズレる(脱臼する)ことを膝蓋骨脱臼といいます。 犬の膝蓋骨は、太ももの骨にある溝(滑車溝)に収まっており、靭帯によって支えられています。 一般的には、小型犬の膝蓋骨内方脱臼(膝の内側にズレる)が非常に多く、中・大型犬では膝蓋骨外方脱臼が多い傾向です。今回は、犬の膝蓋骨脱臼について解説していきます。 原因 膝蓋骨脱臼の原因は、遺伝的要因が影響している先天性と、外傷など後天性の2つに分けられます。 先天性の原因は、生まれつき膝蓋骨が収まっている滑車溝が浅かったり、膝蓋骨を支えている靭帯や太ももの筋肉(大腿四頭筋)の内側と外側の張力のバランスが不均一だったりすることが原因です。 また、進行すると骨格の変形が起こり、さらに脱臼が重度になると考えられています。 後天性の原因は、外傷や交通事故などでエネルギーの大きい外力が加わった際に生じます。 症状 軽度では、たまに片足を上げて3本足で歩いたり(スキップ歩行をする)、すぐに4本足で歩いたり、後ろ足を後方に伸ばして、自分で脱臼を直す様子がみられます。 また、飼い主が抱き上げた時に膝が「パッキン」や「カックン」と鳴る感覚があります。 特に、小型犬に多い内方脱臼では、後ろ足の足先が内側に向く歩き方が特徴的です。 さらに重度になると、ジャンプや段差の登りが出来なくなったり、完全に後ろ足が着けなくなったりする場合もあります。 痛みについては、外傷による脱臼や、急激に脱臼が進行した場合、長期にわたり脱臼を繰り返して関節軟骨が削れた場合に伴います。 診断方法 膝蓋骨脱臼の有無に関しては獣医師の触診が一番の検査方法です。 触診で異常がみられた場合には、X線検査などを行い、骨変形の程度などを確認します。 また、膝蓋骨脱臼は重症度で以下のようにグレード分類されます。 正常 膝蓋骨は脱臼しない グレード1 膝蓋骨は押すと脱臼するが通常は滑車溝に収まっている グレード2 膝蓋骨は自然に脱臼と整復(正常な位置に戻る)を繰り返している グレード3 膝蓋骨は手で整復できるが通常は脱臼している状態 グレード4 膝蓋骨は常に脱臼しており、整復ができない 治療方法 膝蓋骨脱臼の治療方法は、症状、年齢、脱臼のグレードなどを考慮して選択されます。 一般的に小型犬の成犬では、軽度の脱臼で痛みがなければ、手術ではなく内科治療やサプリメント投与、周波数放射パッチ療法で経過観察をします。 しかし、痛みが出ている場合や、常に歩きづらそうな場合など、重症な症例では手術を検討します。 また、1歳未満の場合は、膝蓋骨脱臼を放置すると、成長にしがって後ろ足が骨変形したり、股関節異形成になってしまうため、軽度の脱臼であっても早期の手術を推奨しています。 手術は、各症例に合わせて、浅い滑車溝を深くする滑車溝造溝術、膝蓋靭帯の付着する部位(脛骨粗面)を切り出し脛骨を移動する脛骨粗面転移術など、様々な手術法を組み合わせて行われます。 予防法や飼い主が気をつける点 膝に負担がかからないように、愛犬の体重管理をすることが大切です。 また、床が滑りやすい素材の場合は、カーペットやマットなどを敷いたり、足裏の毛をカットしたりして整えるようにしましょう。 まとめ 今回は、犬の膝蓋骨脱臼について解説しました。 日頃から愛犬や愛猫の様子をよく観察し、気になることがあれば、当院までご相談ください。 ポメラニアン 2歳♀ 右側膝蓋骨脱臼滑車溝形成術 ドリルで滑車溝を削り溝を作る チワワ 2歳♀ 左側膝蓋骨脱臼脛骨粗面転移術 脛骨面付着部骨切り ピンで脛骨粗面を前方に固定 チワワ 2歳♀ 左側膝蓋骨脱臼脛骨粗面転移術 ドリルで滑車溝を削り溝を作る 削った後 両側膝蓋骨脱臼整復